STORY

 今回はより、『ヌード・マウス』を脱がせよう!ということで、これまでのスタッフミーティングの様子をお伝えします。

12月13日(初日まで42日)、スタッフ顔合わせ。

 作・演出、谷さんからこの作品を構想したきっかけやインスピレーションのもとになった話がありました。
細胞というのは2~3年というスパンで入れ替わるため、細胞でみると全く違う人間になっているが、何年経っても同じ人物として見られる…という不思議。
人間の眼には盲点が常にあるが、脳はその部分を他の情報を元にして補完していること。
本人が意識するコンマ何秒前に、脳がすでに行動を決めてしまっているということ。
実際には起こっていないことの記憶を作り出してしまったりする、脳のいいかげんさ。
中でも特に興味深かったのは、脳の可塑性。人間のインプットやアウトプットを増やすと脳が変化する、という話。
例えば、腕を2本増やすと、それに対応する脳のシステムができる、というもの。

美術・土岐さんからは「科学的だけど、脳の話なので有機的なイメージで対比を見せたい。」という意見が。
脳の一部分が欠けているという物語なので、美術も「欠け」や「ブレ」をイメージしたものになる模様です。

12月20日(初日まで35日)、美術打ち合わせ。

 土岐さんが作成した舞台美術模型を囲みながら、話し合いが進められました。「欠け」や「ブレ」をどう表現するのでしょうか?

 谷:「部屋の輪郭を揺らして、平行・直線的な配置をなくしたいんですよ。ちょっとズラして置いたり。その方がセクシーだと思うんですよね。」
模型の中の水槽を少しだけズラしてみせる。すると、先程まで安定していた空間に"セクシー"な揺らぎが。
谷:「いわゆる八の字の配置(手前が広く、舞台奥に向かって閉じていく、舞台によくある配置)だと、落ち着いて見えるんですよね。」
野村:「秩序はあるけど、『エラー』が起きてる、ってこと?」
谷:「美術が実際に揺れるっていうのはどうですかね?」
など、アイデアが展開されていきます。

 中央に置かれたビリヤード台。その形状や置き方についてもアツい議論が。
谷:「上手が前に出てるのと下手が前に出てるのと、どっちが攻撃的ですかね?」
とスタッフ全員の挙手をとる。(ほとんど下手が前でした。) 
谷:「別役実さんの本で読んだんですけど、『上手から下手へ向かって静かな風が吹いている。』ていうのがありまして、立ち位置は上手の方が強いみたいなんですよね。」(ちなみに『別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ』(白水社)に「舞台には、上手から下手に風がゆるやかに吹いている。」という文章が出てきます。)
そこで土岐さんからは「たしかに玄関は上手にすることが多い。」という話が。
また、吉本新喜劇の玄関は下手、つまり流れに逆らう闖入者が来る、という話になり、スタッフ一同納得でした。

12月29日(初日まで26日)、美術・照明打ち合わせ。

 この日は、トーク&リーディングイベントが終了したばかりの会場で、美術模型を囲んでミーティングが行われました。
谷さんから「場面によって同じ部屋とは思えないような変化がほしいんですよね。昼から夜の変化とかの日常的な変化じゃなくて、もっと非現実的な変化が。」という要望が。
舞台美術と照明の両方に関わる課題です。これに答えるべく、どこを変化させると、非日常的なものになるのかという話し合いが進められました。変化するのは美術になるのか、照明になるのか…、どのように変化するのか…。本番が楽しみです。
同じ部屋が全く違ったものに見える、というのを聞いて、最初のミーティングでの「細胞は入れ替わるのに同一人物として見られる」という谷さんの話を思い出しました。
作品の内容がスタッフワークに反映される、というのはこういうことなのかもしれませんね。


1月6日(初日まで18日)、美術・衣装・メイク打ち合わせ。

 前日に土岐さん、舞台監督・棚瀬さん、演出助手・則岡さんが再度、赤坂レッドシアターを下見。挙がっていた案が実際にどう見えるのかを確認した上での話し合いが行われました。
水槽を置く棚の位置は、高さを統一するのか、バラバラにするのか。棚板を4枚にするのか5枚にするのか。
そしてまた、ビリヤード台の話。谷さんの希望は下手前。一方「小道具をしまう場所を考えると上手前の方が使いやすいのでは?」という意見が。
見え方が変わってくるため、細かい確認が進められました。

 そして、衣裳・メイクについて。
途中で着替えるのか、コートはどこで脱ぐのかなど、空間を想像しながらの話し合い。
衣装・横田さんからは、美術や照明とのバランスを想定して、派手な色の衣装は避けたいという意見。
メイク・大宝さんからは、大原さん演じる高見の、若い表情を見つけたので、その雰囲気を髪型に取り入れたい、という提案が。
稽古での役者さんの表情に刺激を受けて、メイクに反映されていったりもするのですね。

 いよいよ劇場入りです。『ヌード・マウス』という作品を表しているスタッフワークにも、ぜひ注目して見てくださいね。